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俳句の作り方、歴史、俳人を探求。日本俳句研究会

書評

定年からの俳句入門

著者加古 宗也
ジャンル俳句入門
出版社:本阿弥書店
発行年月:2010年12月

解説

 新熟年世代へ贈る、花鳥諷詠の楽しみ50代からの人生をいきいきと楽しむ俳句入門書の決定版。

特徴

・俳句の作り方より、『俳句の醍醐味』に重点が置かれています。
・2010年に続々と定年退職を迎えた団塊の世代向けの本です。
・団塊の世代の俳人たちの俳句を例文に取り上げています。
・著者の俳句観が色濃く反映されています。

書評

 俳句作りのテクニックを教えることより、俳句の本質や醍醐味を伝えることを第一としている真摯さを感じました。

 著者は、俳句を作るためには、まず外に出かけて自然の中から感動できる「素材」を見つけることが何よりも大事だと説いています。いかにうまい俳句を作るか? ではなく、いかに素材に接した感動を伝えるか。素材の選び方を解説しています。

 意外と、こういった本質的なことを教えてくれる俳句の入門書は少ないです。
 特に子供の向けの入門書だと、俳句の概要や名句を覚えることを主眼としがちで、俳句の本質部分に目が向けらられることは、ほとんどありません。

 ただ、それが故に、俳句を取りあえず作ってみようと考える初心者にとっては、やや取っつきづらい内容になっていると思います。
 自然の中を散策するのが正しいやり方だとされると、大都市に住んでいる人や、足腰が弱くて外に行けない人にとっては、受け入れがたいかな、と感じました。私も以前、横浜の自然が少ない土地に住んでいたので、こういったケースだと最初の段階でハードルが大きくなってしまいます。

 できれば、人工物に囲まれた都会の中で素材を見つける方法について解説して貰いたかったです。また、正岡子規や松尾芭蕉は、病床でも名句を作っているので、その辺りのことにも言及してくれると助かりました(もちろん、彼らは基礎ができているから、というのが大きな理由でしょうが)。

 前半の部分では、本のターゲットである団塊の世代の作品を取り上げ、その俳句センスを褒めたたいてますが、あとがきでは「団塊の世代は、素直さに欠けるところがあるため、俳句をひねってしまう」と苦言を呈しています。
 どうも著者は、定年退職した団塊の世代をターゲットとした本を書こうと前半は意気込んでいたものの、後半から徐々に、自分の俳句観を伝えたいという気持ちが抑えられなくなったような印象を受けました。

 定年退職者にターゲットを絞った本とは、残念ながらなっていないように見受けられます。もともと俳句の入門書は、忙しい現役世代ではなく、定年退職した人向けに書かれている傾向があるので、わざわざ「定年からの俳句入門」というタイトルにする必要はなかったかも知れません。

 ただ、俳句は「省略の文学」であること。あれもこれもと情報を詰め込むのではなく、削ることが大切だということに改めて気づかせてくれる、という良さがあります。

 作句の際に、言葉をひねりすぎて俳句作りが楽しくなくなっている人などにお勧めです。

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