俳句は「俳諧の連歌」の発句が独立したものです。
最初の句である発句に下の句を次々に付けていく遊びが連歌です。
このため、発句には、どのような下の句でも考えられるような独立性が求められ、強く言い切ることが必要とされました。
このようにして生み出されたのが「切れ」です。
鮎と茄子今日特売の夕餉かな
日比野啓子
この句の末尾には「かな」という感動・詠嘆を表す切れ字が使われています。
切れ字というのは、強く言い切る働きをする語で、切れを生み出すのに使われます。
現代の俳句では、「や」「かな」「けり」の三つの切れ字が使われています。
この句では、「鮎と茄子」の部分でも、いったん句の流れが切れています。
「鮎と茄子」と言い切って、間を作ることで、読み手に、「なぜ鮎と茄子なのかな?」という気持ちを抱かせ、句の中に引き込んでしまう効果を発揮しています。
このようにして、読者に想像の余地を与えて、句の中に引き込み、句に余韻を与えることが、切れの最大の役目です。
いかに良い切れを作り出すかが、俳句作りの醍醐味で、これが作品の善し悪しを決めます。
古池や蛙飛びこむ水の音
松尾芭蕉
この句では、「古池や」の部分で、切れています。
ここで一拍置くことで、読者は、作者である松尾芭蕉の置かれた状況や古池の情景を頭に思い浮かべてしまう仕掛けになっています。
これによって、下に続く「蛙飛びこむ 水の音」に強く引き込まれ、句に大きな余韻も生まれるようになっています。
切れ字
切れを生み出す「かな」「や」「けり」の三つの語。音調を整える役割もあります。
「かな」は末尾に使われることが多く、感動、詠嘆を表します。
「や」は上の句に使われることが多く、詠嘆や呼びかけを表します。
「けり」は末尾に使われることが多く、断言するような強い調子を与えます。また、過去を表す助動詞であることから、過去の事実を断定するような意味合いを与えます。
切れ字十八字
連歌・俳諧で秘伝とされた18の切れ字のことです。
「かな・もがな・し・じ・や・らん・か・けり・よ・ぞ・つ・せ・ず・れ・ぬ・へ・け・いかに」
現在の俳句では、このうちの「かな」「や」「けり」しか使われていません。