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俳句の作り方、歴史、俳人を探求。日本俳句研究会

俳句の作り方

類句を恐れない

 テレビ番組『NHK俳壇』の司会を務めていた好本惠(よしもとめぐみ)さんの著書によると、『NHK俳壇』の選者をしていた俳人の今瀬剛一(いませごういち)さんは、テレビで自分の句を紹介する場合、過去の雑誌などに発表した句に限り、最近作った句は控えていたそうです。

 万が一、最近作った句が誰かの類句だったりして、盗作疑惑をかけられると大変だと言うことで、慎重にになっていたのですね。

 俳句は17文字しかない短い文芸であるため、偶然、似たような句や、まったく同じ同一句が生まれやすい傾向があります。
 このため、大会で賞を受賞した句が、偶然、過去に他のコンクールで入選していたことがある場合があり、問題になることがあります。
 もちろん、この場合は受賞取り消しという措置がなされます。

 歴史上の偉大な俳人の句なら、すべてそらんじている人でも、すべての俳句大会の入選作品や、俳句雑誌に掲載された句に目を通して暗記することは、物量的に不可能でしょうから、このようなトラブルが起きるのは、必然と言えます。 

 ただ、類句を恐れるあまり、俳句をのびのびと作れなくなるのは困りものです。

 松尾芭蕉は、類句について以下のように述べています。

 他の句より、まづ、わが句にわが句、等類する事をしらぬものなり。よく思ひわけて味ふべし。もし、わが句に障る他の句ある時は、必ずわが句を引くべし。
 三冊子

「自分の句が他人の句に似てしまうことより、実は自分が似たような句ばかり作っていることの方に気づかないものです。これを避けるためには、深く考えて、味わいながら句を作ることです。
 もし、類句を作ってしまったら、迷わず自分の句を捨てなさい」
 現代語に訳すと、このような意味になります。 

 類句を作ってしまうことより、自分が似たような句ばかり作っていることの方が問題。もし、類句を作ってしまったら、自分の作品だなどと声高に主張せず、これを引き下げるべきだということですね。

 実際に、俳句大会などでは審査員は、類句がないか慎重の上にも慎重に審査するようですから、偶然、他人と被ってしまうことを気にする必要は、ほとんど無いと言えるでしょう。
 もし、受賞してしまった作品が、後から名作の類句だったことがわかったら、受賞を辞退すれば、大きな問題には発展しないということです。

●藤りんさんのコメント2014/07/23

 句会で一茶の類句の指摘をしたことがあります。
 その時主宰は真似して作っても良いと言っていましたが、句会で真似したものを出すのは結社のモラルにも関わることなのでダメだと思いました。悪意なく類句を作ってしまった時に誰かに指摘されたら潔く捨てることが肝心ではないかと思ったのですが、年配で女性の主宰なので根に持たれても嫌だと思い言えませんでした。