かぎろいの祖母が残した俳句です。
作者 正野
桜前線
・桜前線つれて琉舞の乙少来る
・北の旅歌碑なぞりよむ啄木忌
・惜春や嫁がせてへる籍一つ
・山桜雨の四、五戸を谷にをき
・鯉のぼり遠嶺をなぶるふもと村
・母の日や鎌倉彫の手箱着き
・芍薬の届くや蝶の尋ね来て
・風光る牛舎に倭鶏の鬨つくり
・聖五月日曜日弥撤に妹つれて
・実梅もぎ残るは鵯にさづけ置き
作者 正野
菊人形
・公郷の肩に虹たつ菊人形
・庭石に箒目ながる古都の秋
・秋日和こころにふむ点字標
・狂い咲く石楠花に日のかげり濃し
・穂田の波水車のねむりふかめをり
・里紅葉うだつの家の大家族
・蔓細工日もすがら編む冬隣
・家を得てつくづく清し十二月
・越して来し背山日毎鵯鳴けり
・山の端に鴨鳴き交いて湖眠る
作者 正野
春の家
・新しき木の香に酔へり春の家
・糸手毬年賀にそえて廻りけり
・年賀来る師のみずくきに老の見え
・抄桁を梁にねむらせ春立ちぬ
・野焼跡匂ふにひくく鶸翔べる
・紙漉村つかれし釜を庭にすえ
・あやとりを習う双児に日脚伸ぶ
・移り来し背山の梅に月丸し
・心こめ浄むる仏間金盞花
・春光の川面照り合ふふもと村