草撓うままに止まりし糸とんぼ
鰯雲揺れることなき草穂かな
季語・夏
朝露に頭を垂れている草の湾曲部分に糸とんぼが自然なかたちで止まっている。
夕方近く、鰯雲が山の稜線を越えて遥か彼方まで広がっている。足元には草の穂が風にゆれることなくじっと夕暮れをまっている。
山田たかしさん、こんにちは。
句の感想とは関係ないですが、「糸とんぼ」は夏の季語であるようですね。「とんぼ」が秋の季語であるので、紛らわしいです。
「草撓うままに止まりし糸とんぼ」
糸とんぼの重さが感じられる句です。
空を飛ぶ身軽な生き物である糸とんぼの体重を表現するというのが、なかなか味わい深いと思いました。
そこに確かに糸とんぼが存在しているという質感が感じられ、ここから世界の奥深い広がりを読み取ることができます。
なかなか良い句だと思いました。
「鰯雲揺れることなき草穂かな」
鰯雲(いわしぐも)の季語は秋。秋の静かな空と、草穂の取り合わせですね。
作者の伝えたいことを絞って、効果的な取り合わせを選んでいると思います。
こちらは「静寂」をテーマにした句なのだと感じました。
揺れることない草穂と、鰯雲の広がる空がどこまでも続いているような情景が思い浮かびます。
ただ、おもしろさで言えば、「糸とんぼ」の句の方が良かったと思います。
鰯雲の句は、表現はうまいのですが、着眼点は月並みで、やや面白味に欠けます。