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俳句の作り方、歴史、俳人を探求。日本俳句研究会

書評

俳句の歴史

著者山下 一海
ジャンル俳句史
出版社:朝日新聞出版
発行年月:1999年04月10日

解説

 俳句生誕五百周年。明応八年(1499)の「俳諧自立」から、貞門・談林俳諧、芭蕉の時代、その後の多様な流れを経て子規の俳句革新に到る近世と、虚子・碧梧桐の示した道のさまざまな継承・発展に到る近代。戦禍の俳句と戦後の様相まで、膨大な歩みを豊富な例句とともに解説。
 一冊で俳句の通史がわかる愛好者必読の書。

特徴

・俳句研究者。中級者以上向け。
・ある程度の俳句史と、俳人についての知識を求められます。
・情報量が多く、内容の濃い本です。

書評

一般の人が趣味的に読むための本ではなく、学術の研究書としての色が濃い本です。 

 室町時代の俳諧黎明期から、時代をたどって戦後までの俳句の変遷を詳細に追えるので、俳句の歴史に興味がある人、俳句史の研究をしたい人などには打って付けだと思います。
 私は、まだほとんど俳句の歴史など知らない時期にこれを読んだので、最初は次から次に出てくる知らない人物名、古典名、俳句の流派名などに圧倒され、読み進めるのが大変でした。

 ある程度、予備知識がないと情報量の多さに目を回すと思います。

 俳句入門書などではあまり取り上げられていない、蕉門十哲(しょうもんじってつ)をはじめ、一般的にあまり著名ではない俳人の名前も続々登場し、彼らが残した句も取り上げられています。
 掲載されている俳句は意外と数多く、一ページの八割を句が埋めていることもあります。
 時代の変遷と共に、俳句の作風がどのように変ってきたのか、わかりやすくするための配慮でしょう。

 また、幕末の俳人たちの作品をあげて、正岡子規はこれらを退屈な月並み句として一括して否定したが、実はこの時期の俳句にも深い詩情があり、子規自身も旧派から多くの物を得ているなど、

 通説をそのまま述べるのではなく、その裏にある見落としがちな事実も取り上げています。

 ある程度、俳句史や俳人についての知識がついてくると、その俳人が生まれた時代背景も交えて解説されているので、あの人の作風や功績は、このような時代背景から来ているのだなぁ、ということがわかって興味深く読むことができます。

 例えば、正岡子規が旧派に対して戦いを挑んだことを評価しながらも、明治維新という時代背景から、国民的文芸として広がりつつあった俳句にも新時代にふさわしい変革が望まれていた、子規はそれに乗ったのであって、もし子規がいなかったら、別の誰かが子規の役割を果たしていただろう、と述べています。

 正岡子規クラスの著名人となると、その功績を無条件で讃えてしまいがちです。しかし、そうはせずに、歴史をあらゆる角度から客観的に解説しようという姿勢がうかがえて好感が持てます。

 逆に言えば、著名俳人についての一般的な知識がないと、解説されていることが他の本より深いので、内容を理解するのが大変になります。
 俳句に関する幅広い知識を読者が持っていることを前提にして話しを進めているような点もあるので、初心者向きではないと言えます。
 蕉門十哲に誰を加えるかは、意見が分かれておもしろいところである、と言われても『蕉門十哲』という言葉をこの本で初めて目にした者にとっては、ちんぷんかんぷんでした。

 俳句の歴史や俳人にある程度通じていて、さらに知識を深めたいという方や、俳句の学術研究をされている人にお勧めです。

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