季重なりでもOKな句とダメな句の違いとは?主役をはっきりさせる

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季重なりとは、一つの俳句の中に2つ以上の季語があることです。
俳句は季語を1つにするのが基本であり、季重なりは避けるべきことと言われています。
季語が2つあるというのは、例えば、カレーとケーキを同時に食べるようなもので、それぞれの持ち味がぶつかって、双方を殺してしまうケースが多いのです。

言うまでもなく、カレーとケーキは別々に食べたほうがおいしいです。おいしさの質がまったく違いますからね。

ただし、名句とされるものの中には、季重なりのものもあり、必ずしも季重なりが悪いという訳ではありません。
中には季語がお互いを活かし合うような絶妙な取り合わせの俳句や、季語同士がお互いを邪魔し合わず共存している句もあります。
以下、例を上げます。

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季重なりの名句

一家に遊女もねたり萩と月(作者:松尾芭蕉)

目には青葉山ほととぎす初がつを(作者:山口素堂)

啄木鳥や落ち葉をいそぐ牧の木々(作者:水原秋桜子)

梅雨ながら且つ夏至ながら暮れてゆく(作者:相生垣瓜人)

四五人に月落ちかかるをどりかな(作者:与謝蕪村)

季重なりが許される場合

主役がハッキリしているならOK!

俳句の中に明らかに「強い季語」と「弱い季語」があり、どちらが主役かハッキリしている場合は、季重なりでもOKとなります。このケースの場合は、季語同士がお互いを邪魔しません。
例えば、

蛤(はまぐり)のふたみにわかれゆく秋ぞ(作者:松尾芭蕉)

この俳句の中には、蛤(春の季語)と秋、という2つの季語が入っています。
季重なりの中でも、まったく違う季節の季語を入れた俳句は季違いと言われて、もっともやってはいけないことだとされています。
(季違いの季語は、お互いを邪魔し合う危険が高くなります。まさにカレーとケーキ!)

しかし、この俳句の主役の季語は「秋」であることがハッキリとわかります。
蛤は季語ではなく、単なる名詞としての役割を果たしているのに過ぎません。
このようなケースの場合は、季重なりでもOKとなります。

2つ以上の季語がお互いを活かし合っている場合

一家に遊女もねたり萩と月(作者:松尾芭蕉)

こちらの俳句のように萩と月、という季語が、お互い活かし合って句の質を高めているような場合はOKとなります。
ふつうの季重なりだと、カレーとケーキを一緒に食べるような、お互いの持ち味を殺し合ってしまうようなケースが多いですが、中にはカレーとトンカツのように相性が良く、お互いの質を高め合うことのできる素材もあります。

ただし、相性の良い季語の組み合わせを探すのは、とてつもなく難易度が高く、自分では組み合わせに成功しているのか?客観的に評価するのもむずかしいです。

初心者は季重なりをしない方が無難

季重なりの俳句というだけで、内容を吟味せず問答無用でダメだと感じる人もいます。
俳句のルールに厳しい句会などでは、季重なりというだけでマイナスポイントとなるので、そもそも季重なりをしない方が無難です。

どうしても行いたい場合は、明らかに「強い季語」と「弱い季語」があり、どちらが主役かハッキリわかるような俳句にしましょう。
季語同士が相乗効果を発揮するような季重なりの句はレベルが高すぎて、とてもふつうの人には作れません。失敗する可能性が高くなります。