俳句とは、五・七・五の十七音であるのが基本です。
これは人間の耳にもっとも心地よく聞こえるリズムだからです。
しかし、中には、もっと音の数が多い、字余りの俳句の中にも名句とされるものがあります。
枠に収まりきれない深い情感がある物だけに与えられる評価です。
字余りで有名な句では、河東碧梧桐の
赤い椿白い椿と落ちにけり
があります。
それでは、字余りはどくらいの音数までなら、許されるのでしょうか?
俳句の五七五は「字の数」ではなく、「音の数」を数えたものです。
小さな「ゃゅょ」は前の字と合わせて一音と数えます。
これについては、高浜虚子の句である
凡そ天下に去来程の小さき墓に参りけり
(およそてんかにきょらいほどのちいさきはかにまいりけり)25文字
これが限度だと言われています。
五・七・五を四分の四拍子四小節と見て、一小節が八分音符八個(四拍に相当)分、つまり全体で二四音くらいまでなら定型の範囲に収まると考えられるからです。
参考・『覚えておきたい極めつけの名句1000』(角川ソフィア文庫)のコラムの「字余り・字足らず」p106
高浜虚子はこれ以外にもたくさんの字余りの句を作っています。
ただし、これらの句は「字余りだけれど名句だよね」というように、原則に則った句より一段低い物として扱われることが一般的です。
句会に提出しても、字余りの句が評価されることはあまりありません。
水原秋桜子は、以下のように述べています。
「俳句観賞辞典より引用」
伝統俳句には、2つの大切な約束がありまして、両方ともしっかり守っておりませんと、それは俳句たる資格がないことになります。
その約束の第一は、一句の中に必ず季語(きご)が含まれていなければならぬということ、第二は、使用音数が十七音で、しかも五音、七音、五音という三節から成り立っているということであります。
俳句を四分の四拍子四小節と見るのは、そもそも間違いだとする考えです。
五七五の基本を守って作るのが、俳句作りの最大のコツと言えるでしょう。